久しぶりに見てみたら、今年出された各アルバム勢ぞろいしていますね。
https://www.petsounds.co.jp/ordermurata.html
でも、昨年再発されたEMIの2枚が掲載されていないままなのは疑問です。
以前、No.1237とNo.1254で、ハチロク・アカペラで似たような作品があるということをご紹介しました。
次の3作品です。
・村田和人/夏を忘れた瞳に/10枚目のアルバム『evergreen』(1994年)最後の12曲目に収録(作詞:安藤芳彦、作曲・編曲:村田和人)
・川村康一/サマー・タイム(Summer Time)/1枚目のアルバム『Have A Good Time』(1989年)最初の1曲目に収録(作詞・作曲:川村康一、編曲:岩﨑文紀、コーラス編曲:川村康一・岩﨑文紀)
・西司/屋根裏部屋の天窓から/2枚目のアルバム「EXPRESSION」(1990年)最後の10曲目に収録(作詞:森生遊子、作曲:西 司、編曲:西 司)
実際には、このうち村田さんの作品には、リズムボックスが入っていました。
その後、これらの作品のベースになったのは、次の曲の山下達郎さんによるカバーではないかと思うようになりました。
・That's My Desire
これは、『On the Street Corner』という山下達郎の1980年のアカペラ・ドゥーワップ・カバー・アルバムの1曲で、もっとも古くは1940年代ごろから歌われている作品のようですが、長い期間に渡って多くの歌手がレコーディングしたオールディーズです。その中には、ドゥーワップでないバージョンもあり、いったいどの作品をベースにしてこの山下バージョンが出来上がったのかはよくわからないところがあります。しかし、この山下バージョンは、明らかに「ハチロク・アカペラ」です。
当時、このレコードを持っていてよく聴いたものでしたが、久しぶりに聴いて(レコード音源ではありませんが)、上記3作品と比べてみると、山下作品は、若かりし頃の作品だからでしょうか、自信にあふれ非常に力強い感じがするとともに、他方で、奥行きがない感じがしました。原曲が昔の作品であるということを意識のうえ、エコーをほとんど効かせていないということでしょうか。
そういった部分も比較して、ご紹介した上記3曲を改めてお聴きいただくと、なお面白いと思います。
(つづき)
なお、このような雑誌の「増刊」というものは、公立図書館ではなかなか所蔵されないようです。一般の「単行書」ではない、「ムック本」というとらえ方で、所蔵に消極的だということかもしれません。どうやら国立国会図書館にも所蔵されていないようです。ミュージック・マガジン社が「納本」していないということでしょうか? 時間がたつと、参照することが困難になりそうなので困りますね。
それから、今回もそうだったのですが、検索をするときに「CITY POP」と「シティ・ポップ」で(場合によっては「City Pop」でも)結果が異なることがあります。検索する側が特に区別をしているなら別ですが、そんなケースはまれでしょうから、すべての結果がまとめて出てほしいのですが、検索によっては、そうではないようです。念のために2語(または3語)とも検索すれば済むわけですが、10か所で検索する場合には、その倍の20回(3倍の30回)の検索が必要になってしまいます。何とかならないものかと思います。「検索」の機能というか効率化については、未だに課題が多すぎます。
最後に、よく書かれているように、1980年代当時の「シティ・ポップス」と比べると、現在の「シティ・ポップ」は、海外での再評価が先行してその理解(誤解?)の影響が大きく、時期も範囲も非常に広くなってきており、当時を経験した者としても大いに違和感があります。しかし、大きなこの流れは止めようがなく、おそらく、このような広い範囲で確定する(すでに確定している?)のだろうと思います。過去(当時)の事実(実態)が消えていく(塗り替えられていく、再定義されていく)のを目の当たりにしている感覚です。
次の本が刊行されています。
CITY POP BEST100――シティ・ポップの名曲 1973-1989
レコード・コレクターズ2023年11月号増刊) -
ミュージック・マガジン
2023年11月20日発行
定価 2000円(本体1818円)
A5判272ページ
http://musicmagazine.jp/published/rcex-202311cpb.html
これは、レコード・コレクターズ2020年6月号と7月号の70年代、80年代の「BEST 100」の特集と、2018年9月号の「シティ・ポップ──アイドル/俳優編」の特集をまとめた本です。それに、吉田美奈子、杏里、濱田金吾らのインタビューが追加されています。
No.1174(レココレ80年代シティ・ポップの名曲ベスト100)でご紹介したとおり、もともとの特集「BEST 100」の80年代のほうで村田さんの作品が2曲取りあげられていますので、目新しくはありませんが、その2曲がそのとおりに掲載されています。
なお、前半の「BEST 100」と後半の「アイドル/俳優編」を1冊にするというのは、無理やりなまとめ方ですね。最後に掲載されている「アーティスト索引」を見るとちぐはぐさがよくわかります。見ていると目がちかちかしそうです。
目次を掲載しておきます。
<もくじ>
はじめに(編集部)
[インタヴュー] Night Tempo(小山守)
[インタヴュー] 吉田美奈子(栗本斉)
[インタヴュー] 杏里(池上尚志)
[インタヴュー] 濱田金吾(馬飼野元宏)
[インタヴュー] 永井博(『レコード・コレクターズ』2017年10月号から再録)(金澤寿和)
[対談] 海外でのシティ・ポップの人気もフィードバックされつつ進んだ再評価(長谷川陽平╳松永良平)
AIアルゴリズムがレコメンドする「プラスティック・ラブ」(柴崎祐二)
シティ・ポップの名曲ベスト100 1973-1979(池上尚志、遠藤哲夫、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、北中正和、小山守、サエキけんぞう、篠原章、柴崎祐二、ヒロ宗和、武田昭彦、立川芳雄、中村彰秀、祢屋康、人見欣幸、藤井陽一、馬飼野元宏、松永良平、村田健人、安田謙一、油納将志、除川哲朗、渡辺亨)
シティ・ポップ 1973-1979 総得票数ランキング
選者からのもうひとつのおすすめ曲
選者アンケート:私にとっての70年代シティ・ポップ
機材や技術の変遷とともに誕生したシティ・ポップのサウンド(中村公輔)
シティ・ポップの名曲ベスト100 1980-1989(池上尚志、遠藤哲夫、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、小山守、サエキけんぞう、篠原章、柴崎祐二、ヒロ宗和、武田昭彦、立川芳雄、中村彰秀、祢屋康、人見欣幸、藤井陽一、馬飼野元宏、松永良平、村尾泰郎、村田健人、安田謙一、油納将志、除川哲朗、渡辺亨)
シティ・ポップ 1980-1989 総得票数ランキング
選者からのもうひとつのおすすめ曲
選者アンケート:私にとっての80年代シティ・ポップ
歌謡曲とシティ・ポップの結節点(馬飼野元宏)
シティ・ポップ──アイドル/俳優編
[特別対談]70〜80年代のアイドルの作品はシティ・ポップ的な楽しみ方ができるんです(藤井陽一╳中島愛)
シティ・ポップ──アイドル/俳優編 名盤選(藤井陽一、池上尚志、遠藤哲夫、大久達朗、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、小山守、サエキけんぞう、柴崎祐二、杉原徹彦、鈴木啓之、関根圭、高橋修、武田昭彦、立川芳雄、土佐有明、原田和典、人見欣幸、馬飼野元宏、松永良平、水上徹、村尾泰郎、安田謙一、除川哲朗)
アルバム選
シングル選
新しい音楽の波を担った作詞/作曲/編曲家名鑑(馬飼野元宏)
アーティスト索引
編集後記
なお、この本は、2019年に刊行された次の本の第2弾の位置づけとのことです。
シティ・ポップ 1973-2019
レコード・コレクターズ2019年8月増刊号
ミュージック・マガジン
2019年8月1日発行
定価1800円(本体1667円)
A5判256ページ
http://www.musicmagazine.jp/published/rcex-201908cpop.html
こちらも目次を掲載しておきます。
<もくじ>
はじめに(編集部)
[インタヴュー]大貫妙子(渡辺亨)
[インタヴュー]Night Tempo〜再評価を先導した韓国のDJ(松永良平)
[インタヴュー]北沢洋祐〜 “Light In The Attic” レーベル所属プロデューサー(松永良平)
1973-1979名盤選(池上尚志、遠藤哲夫、大久達朗、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、北中正和、栗本斉、小山守、篠原章、柴崎祐二、清水瑶志郎、関根圭、ヒロ宗和、高木龍太、武田昭彦、立川芳雄、土佐有明、中村彰秀、人見欣幸、馬飼野元宏、松永良平、水上徹、宮子和眞、村尾泰郎、安田謙一、除川哲朗)
自分たちが暮らす都市を描く音楽として捉えなおされるシティ・ポップ(松永良平)
米国シーンの流れを同時代的に取り入れたクールな日本の音楽(渡辺亨)
ブラジルのシンガー、エジ・モッタが語るシティ・ポップの魅力(中原仁)
[インタヴュー]ハワード・ウィリアムズ(英国人DJ、ディストリビューター)(松永良平)
1980-1989名盤選(池上尚志、遠藤哲夫、大久達朗、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、栗本斉、小山守、篠原章、柴崎祐二、清水瑶志郎、新間功人、ヒロ宗和、武田昭彦、立川芳雄、土佐有明、中村彰秀、人見欣幸、藤井陽一、馬飼野元宏、松永良平、水上徹、宮子和眞、村尾泰郎、安田謙一、油納将志、除川哲朗、渡辺亨)
[インタヴュー]角松敏生(柴崎祐二)
80年代を知らない世代に「いいですね」と言われると、この音楽には何かあるのかもなと思うんです(松永良平×藤井陽一)
80年代音源へと拡張を続ける“和モノ”の実情を探る(池上尚志)
[インタヴュー]クニモンド瀧口(流線形)(池上尚志)
“私的”80年代シティ・ポップ・ベスト10(クニモンド瀧口)
1990-1999名盤選(池上尚志、INDGMSK、遠藤哲夫、大久達朗、小川真一、片島吉章、金澤寿和、ガモウユウイチ、栗本斉、小山守、篠原章、柴崎祐二、清水瑶志郎、関根圭、thaithefish、武田昭彦、立川芳雄、ハタ、人見欣幸、藤井陽一、馬飼野元宏、水上徹、村尾泰郎、安田謙一、油納将志、除川哲朗、渡辺亨)
「90年代のシティ・ポップ」が旧来の価値観を転覆させる(柴崎祐二)
[インタヴュー]国分友里恵(池上尚志)
[インタヴュー]児島未散(馬飼野元宏)
シティ・ポップ 2000-2019〜再評価とパラレルに登場した、都市の風景をリアルに描く若手ミュージシャンたち(小山守)
[コラム]シティ・ポップは米ヒップホップのインフルエンス源へと昇格した?(長谷川町蔵)
[コラム]自国アーティストの再評価へと向かう韓国シティ・ポップ(高橋修)
索引
編集後記
現在書店に並んでいる「レコード・コレクターズ2023年12月号」ですが、その特集は、
「この曲のベースを聴け! 日本編」
様々な曲が取りあげられ、参加したベーシストの観点から、解説がなされています。
その中に、村田さんの1曲がありました。
p68の最上段:リアルは夏の中(『太陽の季節』(1989年)収録):ベーシストは湯川トーベン
湯川トーベンといえば、「子供バンド」にも在籍していたベテランですが、いったいどういうきっかけで、村田さんと活動を共にするようになったのでしょうか? 「子供バンド」の活動停止が1988年ということのようですので、その後に、村田バンドに参加(村田バンドを結成)したのか?
その辺りもまとまった情報はないようです。
そもそも、村田バンド全般についての情報も、ほとんどありません。
村田バンドのメンバーというと、
山本圭右(Gt) 湯川トーベン(Ba) 向山テツ(Dr) 小板橋博司(Per) 友成好宏(Key)
ということになるのでしょうが、結成の経緯、メンバー変遷など、村田バンドの歴史を、メンバーのどなたかが、または全員で協力して、どこかに記して残していただけないものでしょうか? 無理なお願いでしょうか?
よろしくお願いいたします。