以前にも少し書いたかと思いますが、せっかくですので、ぜひ『GOLDEN☆BEST村田和人』をだしていただけないものでしょうか。
『GOLDEN☆BEST』シリーズの特徴は、次の2点ではないかと思います。
1.レコード会社(CD会社)の枠を打ち破って、横断的に作品を収録している。
2.『GOLDEN☆BEST』でしか聴くことができないか、聴くことが難しい曲が収録されている。例えば、新曲、今までアルバムに収録されていないので聴くことが難しいシングル曲やそのB面(c/w)の曲、ライブ作品など「ボーナス・トラック」的な作品。
1点目は、村田さんの場合大きなメリットがあります。レコード会社(CD会社)ごとのベスト盤は何枚もありますが、壁を取り払った全活動期間をカバーするようなベスト盤は、未だ存在しないからです。
2点目は、現在村田さんのCD(アルバム)はだいたい入手可能で、その中に、かなりボーナストラックが含まれていて、一見聴くことが難しい曲はあまりないようにも見えます。しかし、盛んにご紹介していますようにユニットのCDで長らく入手困難なものがあったり、またオムニバスアルバムに1曲ずつ収録されている曲もあり、さらに、いわくつきの?シングルである「JUST A LOVE SONG/TIME FOR LOVE」(1987年、映画『ハワイアン・ドリーム』エンディングテーマ曲)もあったりします。さらに発想を変えて、もし、ライブ音源の収録を考えるのであれば、いくらでも未発表のものが眠っているのではないかと思います。
伊豆田洋之さんの『GOLDEN☆BEST』のように2枚組とかもいいですねえ。
非常に一般的なタイトルですが、話は村田作品から始まります。
村田さんの作品の中で、どのアルバムが好きか? どの曲が好きか? を考えると、当たり前ですが、個人差がでます。そして、この差は単なる「個人の好み」だけから来ているのでしょうか?
あるアルバムや作品(曲)を高く評価するかどうかは、単純な「個人の好み」以上に、その曲を聴いた環境というか、どれだけ聴いたのか、それに伴って個人の記憶や経験がどういうものなのかに大きく左右されるだろう、と思っています。
例えば、かつてある旅行に行ってすごく楽しかった思い出がある。その旅行の際によく聴いていた村田作品があったとしたら、その作品は、その旅行の記憶や経験と強く結びついて、いい作品だと思うようになる可能性が高いのではないでしょうか。逆に、非常につらい時期があって、村田さんのある作品がその時の心の支えになっていたとしたら、その作品が大好きだと思うようになるのは、当然といっていいかもしれません。
個人の記憶や経験は千差万別ですから、作品に対する評価に個人差が生じることは当然であり、個人の記憶や経験と切り離した客観的な評価などというものは極めて難しいということになるのだと思います。
この話題、今後また書いてみたいと思っています。
先にご紹介したように、村田さん関係のユニットについては、次の3枚のアルバムが再発されておらず、入手できない状態です。
・Jean & Gingers『The Greatest Hits』(1998年)
・A, M, S & I『奇跡はここにあるのさ』(1999年)
・Aloha Brothers『世界のアロハ・ブラザーズ』(2010年)
ここで、いまさらですが、この3枚について、基本的な情報を整理しておきます。
・Jean & Gingers『The Greatest Hits』(1998年)
発売日:1998年02月01日
規格品番:VPCC-80512
レーベル、販売会社など:SSPP/バップ
SKU/JAN:4988021805124
<収録曲>
1.天使になった日
2.Good-Bye Sunshine
3.Dream
4.ばるぼら
5.憧れのラブストーリー
6.永遠のBeginning
7.Song for you
8.Old friend
9.Always on my side
10.MELODY
11.家を飛び出せパパ!
・A, M, S & I『奇跡はここにあるのさ』(1999年)
発売日:1999年11月01日
規格品番:PSCR-5808
レーベル、販売会社など:ポリスター(ユニバーサルミュージック)
SKU/JAN:4988023040059
<収録曲>
1.Introduction
2.We Are Travelin' Band
3.Aria
4.地球はメリーゴーランド
5.軽蔑
6.New York Style
7.Living Loving Maid(She's Just A Woman)
8.Re・mind(偶然君と…)
9.I Wanna Knock On Your Door
10.Holy Star
11.奇跡はここにあるのさ(Christmas Time in 1999)
・Aloha Brothers『世界のアロハ・ブラザーズ』(2010年)
発売日:2010年04月28日
規格品番:UPCH-20190
レーベル、販売会社など:NAYUTAWAVE RECORDS/ユニバーサルミュージック
SKU/JAN:4988005606921
<収録曲>
1.60分間世界一周
2.PAKALOLOは愛の言葉
3.とりあえずジャマイカ
4.遙かなるエルドラド
5.Episode 1
6.恋はボリショイ
7.チャイは投げられた
8.Episode 2
9.パリの風の中 恋は消えゆく
10.幻のスコットランドガール
11.君のいないRAINY DAY
12.Episode 3
13.浜辺のあの娘
14.テレマカシ・バニャ
15.60分間世界一周 (Reprise)
16.神様のプレゼント 【ボーナス・トラック】
17.君にしてあげられること (Demo) 【ボーナス・トラック】
実に、こういう項目について、まとまった情報がないんですね。
CDが再発されるのかどうかは、レコード会社によるところが大きいと思います。そこで、レコード会社を見てみますと、ユニバーサルは再発をよくしていると思いますので、A, M, S & IとAloha Brothersは再発の可能性があるかもしれません。他方バップは再発などしたことがあるのでしょうか? あまり再発は期待できないかもしれません。
今まで、配信されている村田作品が何なのかをばらばらとご紹介してきていますが、まだ配信されていない作品もいろいろとあります。
この場で、配信されていないことにすでに言及している作品もありますが、改めて整理してみましょう。
オリジナルアルバムなど
・『Now Recording+』(2008年)のボーナストラック
・『P-CAN』(2014年)
・「雨の日には」(2017年)シングル扱い?
(注)No.1170でご紹介したように、『Now Recording+』のボーナストラック以外、と『ずーーっとずっと、ずっと夏。』(2012年)は、「mora」だけで配信されている模様です。
ユニット
・Jean & Gingers『The Greatest Hits』(1998年)
・A, M, S & I『奇跡はここにあるのさ』(1999年)
・Aloha Brothers『世界のアロハ・ブラザーズ』(2010年)
なお、『アロハ・ブラザース2曲(1096)』でご紹介した以下の2曲については、前者は杉真理さんのアルバムの中の作品として配信されています。また、後者はmoraでのみ「杉真理&FRIENDS」のアルバムとして、配信されています。なぜ後者のアルバムがSpotifyなどで配信されていないのかはよくわかりません。
『魔法の領域』(2008年)収録の「君にしてあげられること」
『THIS IS POP』(2014年)収録の「あの日にダルセーニョ」
オムニバス盤への収録曲(ここは確認漏れがあるかもしれません)
・映画『ハワイアン・ドリーム』サウンドトラック(村田和人「JUST A LOVE SONG」/「TIME FOR LOVE」収録)(1987年)→この2曲はシングル曲です。
・『Winter Gift Pops』(村田和人「Miss You Baby」収録)(1997年)
・『CITY POP〜WARNER MUSIC JAPAN edition』(村田和人 with 安部恭弘&木戸やすひろ「潮騒 (The Whispering Sea)」収録)(2003年)
・『HULA Cafe Vol.2』(村田和人 「Road to the Paradise」収録) (2006年)
・『午後のボッサ〜カフェ・ビートルズ』(村田和人「Eight Days A Week」収録)(2010年)
なお、ベスト盤については、配信されていないものがありますが、確認できていません。別途確認するようにいたします。
少し古い号ですが、レコード・コレクターズの昨年2020年7月号の特集は「1980-1989シティ・ポップの名曲ベスト100」(背表紙には「80年代シティ・ポップの名曲」と少し違う表記が)。
この特集では、いわゆる「シティ・ポップ」と呼ばれる作品を25人の音楽評論家に1位~30位まで選んでもらい、それを集計して1位~100位まで順位をつけています。選ばれている作品は、シングル曲には限られず、アルバム収録の作品も含まれています。
この「ベスト100」の中に、われらが村田さんの作品が何と2点も入っています。
・第10位:一本の音楽
・第28位:電話しても
よく見ると、この2枚のシングルのジャケットは、この号の表紙にも掲載されています。
順位にはそれほど厳密な意味はないとは思うのですが、それにしても10位とはすごい。いい話です。
なお、アーティスト別のランキングでも、村田さんは16位に入っています。
解説を読むと、山下達郎さんの作品としての評価がかなり入って選ばれているようだということがわかります。ある意味では、初期の作品は、山下達郎がやりたかった「夏作品」というものを、村田和人に託して体現させたという面は否定できないので、やむを得ないとはいえます。
しかし、「一本の音楽」は、テーマ・タイトル先行という無茶な企画なのに、安藤芳彦さんと組んで、よくぞあそこまできれいに曲を仕上げたものだという点から考えても、村田和人の成果として高く評価できることは間違いありません。そして、実際単純にいい曲だと思います。ボーカルもコーラスも「のって」いて、CMソングだからとか、そういうことを超えていると思います。
ただ、個人的な感度ですが、村田作品として、この2作品ばかり取り上げられることには、残念な気持ちがあります。ほかにもいい曲があるのにね、と。今まで村田さんをあまり聴いたことのない人が、Spotifyの配信で(無料なので)、試しにいろいろと聴いてみて、村田作品を知っていただけるのならば。ファンとしてはありがたいのですが。
特に、山下色は強いのですが、まずは最初の2枚『また明日』(1982年)、『ひとかけらの夏』(1983年)のキラキラと輝く作品群(当時高校生だった当方が魅了された作品群)を、お試しあれと申し上げたい。