少し古い号ですが、レコード・コレクターズの昨年2020年7月号の特集は「1980-1989シティ・ポップの名曲ベスト100」(背表紙には「80年代シティ・ポップの名曲」と少し違う表記が)。
この特集では、いわゆる「シティ・ポップ」と呼ばれる作品を25人の音楽評論家に1位~30位まで選んでもらい、それを集計して1位~100位まで順位をつけています。選ばれている作品は、シングル曲には限られず、アルバム収録の作品も含まれています。
この「ベスト100」の中に、われらが村田さんの作品が何と2点も入っています。
・第10位:一本の音楽
・第28位:電話しても
よく見ると、この2枚のシングルのジャケットは、この号の表紙にも掲載されています。
順位にはそれほど厳密な意味はないとは思うのですが、それにしても10位とはすごい。いい話です。
なお、アーティスト別のランキングでも、村田さんは16位に入っています。
解説を読むと、山下達郎さんの作品としての評価がかなり入って選ばれているようだということがわかります。ある意味では、初期の作品は、山下達郎がやりたかった「夏作品」というものを、村田和人に託して体現させたという面は否定できないので、やむを得ないとはいえます。
しかし、「一本の音楽」は、テーマ・タイトル先行という無茶な企画なのに、安藤芳彦さんと組んで、よくぞあそこまできれいに曲を仕上げたものだという点から考えても、村田和人の成果として高く評価できることは間違いありません。そして、実際単純にいい曲だと思います。ボーカルもコーラスも「のって」いて、CMソングだからとか、そういうことを超えていると思います。
ただ、個人的な感度ですが、村田作品として、この2作品ばかり取り上げられることには、残念な気持ちがあります。ほかにもいい曲があるのにね、と。今まで村田さんをあまり聴いたことのない人が、Spotifyの配信で(無料なので)、試しにいろいろと聴いてみて、村田作品を知っていただけるのならば。ファンとしてはありがたいのですが。
特に、山下色は強いのですが、まずは最初の2枚『また明日』(1982年)、『ひとかけらの夏』(1983年)のキラキラと輝く作品群(当時高校生だった当方が魅了された作品群)を、お試しあれと申し上げたい。
古い情報なのですでにご紹介しているかもしれないのですが、念のため。
伊藤銀次さんの「POP FILE RETURNS」というウエブラジオ番組で、2016年の「追悼・村田和人」の回が、まだ聴くことができます。以下のとおりです。
アーカイヴ配信スペシャル 伊藤銀次のPOP FILE RETURNS
第148回「追悼・村田和人」特集その1 ~誰よりも熱いロック魂の人だった編~ ゲスト:杉真理(2016/06/24 配信)
https://www.110107.com/s/oto/diary/detail/1280
第149回「追悼・村田和人」特集その2 ~天国に行った村田のメッセージ編~ ゲスト:杉真理(2016/07/01 配信)
村田和人らしい音楽って何でしょうか?
そんなの決まってるじゃないか、夏っぽい音楽でしょ?
夏だ、海だ、村田和人だ!
のような声が聞こえてきそうですが、それだけだと、師匠筋の山下達郎さんの一部の作品もそうだし、さらにさかのぼればビーチボーイズだってそうだし、そう考えると、単にそれだけではないのではないか、と思います。
本日は答えが出ませんが、「村田さんらしさ」、引き続き考えて、追っていきたいと思います。
1つのヒントは、他の人の音楽を聴いたときに、あれっ、これ村田さんっぽい、と思う曲があるのではないか、ということです。
別に、パクッてるとかパクられてるとかそういう視点ではなく、音楽というもの、オリジナリティとともに、やはり影響をお互いにいろいろと与え合っているものだと思いますので、そこにヒントがあるのではないかということです。
村田さんの初期5枚のアルバムが、2012年盤だけでなく2006年盤もSpotifyで配信されているということを、No.1167でご紹介したところですが、当然なのかもしれませんが、Amazonでも配信されていました。
ところで、配信サービスをしている会社は数えていくと少なくとも40社弱くらいあると思いますが、これは、どの程度「横並び」なのでしょうか?
「横並び」とは、1社で配信されるということは、ほとんどの会社でも配信されるということなのか? ということです。
逆に言うと、1社で配信されていなければ、もう他の配信を調べるまでもなく、どこからも配信されていないと結論できるのか? という問題です。
もしも「横並び」でないとしたら、いいかえると、ある1社だけでしか配信されていないような作品が、普通に存在するのだとしたら、検索を配信サービスをしている全30数社で"しなくてはならない"という状況になります。
なお、気づいている範囲では、配信会社の中でも「mora」が割と独自性を持っているようです。村田さん関係でも、Spotifyにはない『Now Recording +』(ただし「+」というタイトルなのに「+」にあたるボーナストラックは含まれていない)と『ずーーっとずっと、ずっと夏。』が配信されています。
この2枚を追加すれば、村田さんのソロアルバムで、未だ配信に一切載っていないのは『ピーカン』のみとなります。もともとのCDが通販のみで一般流通に載せなかった、という点が裏目に出ているということかもしれません。いやいや、単にISLAND MOON MUSICが配信会社に依頼すればいいだけなんじゃないでしょうか? 村田さんソロ名義のラスト・アルバムをあえて配信させないという選択肢はないと思うのですが。
それはそれとして、村田ユニットのうち、まだ(おそらくどこからも)配信されていない「A, M, S & I」「Jean & Gingers」「Aloha Brothers」のそれぞれのアルバムが、近いうちに配信されることを強く希望します。