本来の村田さんの話題に戻りましょう(笑)。
次の本をたまたま見る機会がありました。
ザ・カセットテープ・ミュージックの本
つい誰かにしゃべりたくなる80年代名曲のコードとかメロディの話図書
マキタスポーツ・スージー鈴木
リットーミュージック
2020/10
スージー鈴木さんはご存じのとおり、たくさん本を出していますが、当方とほぼ同じ世代ながらも、(村田さんがデビューした)1980年代に聴いていた(らしい)音楽の範囲が当方とは相当に異なるので、あまり真剣に彼の本を見ていませんでした。
しかし、今回この本をたまたま見てみたら、巻頭の記事(ラジオ番組の文字起こしのようでマキタスポーツ・スージー鈴木の両氏の対談+解説、という構成)の中のp11からp12にかけて、村田和人「See You Again」(4枚目の『Showdown』(1986年)に、最後の曲として収録、作詞:竹内まりや、作曲:村田和人、編曲:Ronnie Foster)を大絶賛していたので、ご紹介します。
(以下引用、まず解説、次いで対談という実際に掲載されている順番で引用します。なお、『Showdown』のジャケット写真も掲載されています。)
進撃のアーバン
アーバンという言葉は番組内で完全に市民権を得た。
そんな中、第48回『ポツンと一曲』(2020年9月8日放
送)で、さらなる楽曲がマキタによって投下されている。
村田和人というシンガーソングライターの「See You
Again」なるナンバーだ。82年のデビュー曲「電話し
ても」のデモテープを聴いた山下達郎がその才能に惚れ
込んだという逸材で、山下のバック・コーラスを務めて
いた時期もある。この「See You Again」についてもメ
ジャー・セブンスを多用しているというのだ。それでも、
マキタは彼をシティ・ポップではなく、アーバンという
言葉で取り上げていく。以下は、その時の会話だ。可能
であれば曲を聴きつつ、読んでいただきたい。
マキタ「See You Again」という曲の分析に入りますけ
ど、これでもかというくらいアーバンなんですよ。とに
かくメジャー・セブンスが出まくっていますし、メロディ
をいわゆる7度という音ですね。さらに追い打ちかけて
言うと、コード進行が、イントロからD on E。そのあ
とにF#m7(11) on C#という、めちゃくちゃ複雑な音な
んです。
スージー ああ大人だ。アーバンだな。
マキタ ……で、歌が始まるん
ですが、「こんな時が来るなん
て」……。「こんな」の「な」
がシの音。「こんな」が7度。「来
るなんて」の「く」も7度なん
ですよ。このメジャー・セブン
スというコードは「悲しくもあ
り明るくもあり」という複雑な音色で、なんとも言えな
い「漂う悲しみ」みたいなものを表現しているんです。
やっぱり、こういう都市型のラブソングで、節度と言い
ましょうか……悲しみにどっぷりと行かない感じでね。
メジャー・セブンスというコードと、メロディーも7度の
音を使いながらストイックな歌の世界を積み上げてっ
て、最後に「See You Again」で終わるんです。これで、
ラスト「See You Again」のところをちょっと聴きたい
ので……。
その時まで さよならMy Love
元気でいて See You Again
マキタ あぁ……、ちょっとスージーさん……ちょっと
水漏れ……。
スージー 来ましたか……水漏れ(笑)。
マキタ これね、ホントにたまらないんですよ。ちなみ
に最後のコードはA△7 on Eですね。やっぱり不協和
音的な響きなんですけど。「See You Again」の音とコー
ドが合っているようで合っていないようで……合ってるん
ですけど、高いところで「See You Again」じゃなく、
この「See You Again」で終わる最後の必殺技感。奥さ
ん、どうでしたか! 総論を言います。村田さんは、メ
ジャー・シーンという町場から離れて活動はしていたけ
れども、志は高く、気高く美しい曲を歌い続けた。「See
You Again」ありがとう!
(注:村田和人は2016年に惜しまれつつ亡くなっている)
(以上で引用終了)
ちなみに、彼らは、新たに「アーバン・ミュージック」というジャンルを提唱し、彼らの主張では、「シティ・ポップとアーバン・ミュージックは違う」、「村田和人はアーバン・ミュージックである」ということになります。この点を前提としていただくと、上記引用もよりわかりやすくなるのではないでしょうか。この主張についてはこれ以上深入りしませんが、ご関心のあるかたは、この本をご参照ください。
なお、この本の中で村田和人に言及しているのは、残念ながらこの部分だけのようです。