ミュージシャンが音楽活動をやめよう、少なくとも休止しよう、と思う理由(原因)は、何でしょうか? 「やめる」とは、もう新しいCDは出さないとか、もうライブはしないとか。
これは、とにかく、ご本人の気持ちでしょう、
まず考えられるのは、気力・体力、健康の問題。体力的に活動を継続できない、病気になったなど、そういうことがきっかけになりうると思います。村田さんのように、病気だからこそ継続する、ライブを増やそう、と考えるかたもいるわけですが。
他方、売れなくて、商業的に継続が難しい、という理由もあるでしょう。それは、本人の意思と合致している場合もあり、合致していない場合もあるはず。
そして、この「商業的に」ということは、作品の良し悪しと必ずしも一致しません。要するに、作品として質が高い、少なくとも制作した側はそう思っている場合でも、商業的に成功する(売れる)とは限らない。そんなことは日常茶飯事です。音楽の分野でも美術の分野でも文藝の分野でも。
この理由の場合、本人が継続したくても、レコード会社が、「採算が取れない」という理由で新しいCDの制作を受けてくれない場合もあるでしょう。そういう場合には、かつてならば自主制作にするか、最近ならば配信だけにしてCDは出さない、そういう選択肢がありますね。また、CDを出さなくてもライブは全く独立して継続することも可能です。ですから、必ずしも、「売れないから即やめる」という結論にはならないでしょうが、それでも大きな理由の1つにはなります。
例えば、村田さんの場合、「Victor・ROUX」の3枚のアルバム(1993年~1995年)は、そうだったのではないでしょうか? 作品の質は高いのに思うように売れてくれない、これは、ご本人にとっては大いにショックで、音楽活動の継続を阻害する大きな原因になると思います。経済的にというよりは、むしろ心理的が原因になるでしょう。「こんなに良く仕上がったのに、評価されないのか」「これでもダメなら、もういいか」などと落胆するという感じでしょうか? 端的に書けば、がんばって続けて行こうという気持ちを失ってしまうということです。特に、アルバムを制作するには、相当の集中力と気力が必要であるから、今後、それに対応できるだけのものが自分にあるだろうか、もしそう思ってしまうとしたら、制作に取り掛かろう、という決心も鈍るでしょう。
村田さんの場合には、その後、見事「大復活」なさったのでよかったのですが、誰もがそうなるとは限らない、その後の活動を本当に諦めてしまう、というケースもあるはずです。
村田さんとも、「ムーンキッズ」でご一緒の濱田金吾さんのラストアルバム『Fall In Love』もそういう位置づけ、質が高いのに、思ったほど商業的に成功しなかったという例、ではないかと思っています。その後、濱田さんのアルバム制作は途切れてしまいました。残念なことです。