1970年代半ばごろからの山下達郎の音楽の1つの大きな特徴は、同時代のニューミュージックの作品に比べ、ブラスやストリングスが強く入っているということかと思います。言い方を変えれば、同じとは言えませんが(少なくともブラスパートの「派手さ」は異なる)、バート・バカラック的なオーケストレーションを取り入れるということですね。
例えば、1980年のシングル「RIDE ON TIME」のクレジットは以下のとおりです(アルバム『RIDE ON TIME』のボーナストラックのクレジット)。
RIDE ON TIME(ライド・オン・タイム) (シングル・バージョン -Single Version-)
作詞・作曲。編曲:山下達郎
山下達郎 : Electric Guitar (Right), Kalimba, Percussion& Background Vocals
青山純 : Drums
伊藤広規 : Bass
椎名和夫 : Electric Guitar (Left)
難波弘之 : Keyboards
土岐英史 : Alto Sax Solo
吉田美奈子 : Background Vocals
数原晋 : Trumpet
岸義和 : Trumpet
向井滋春 : Trombone
粉川忠範 : Trombone
村岡建 : Tenor Sax
砂原俊三 : Baritone Sax
ブラス関係のうち、「土岐英史 : Alto Sax Solo」はいつも一緒にいるようなメンバーでもありますからともかくとして、それ以外にも6人(6本)もあるのですから、音が厚くなって当然です。他方、この曲(このアルバム)にはストリングスはありません。また、アルバム『RIDE ON TIME』の多くの曲にブラスが入っていますが、ストリングスは入っていません。
なお、山下達郎関係で顕著な参加が見られるストリングスは、多忠明さんの多(おおの)グループで、2枚目の『スペイシー』以降、(『RIDE ON TIME』を除いて)1983年の『メロディーズ』まで、それぞれ数曲での参加が確認できます。
さて、では、山下達郎がプロデュースした、村田さんの初期の作品には、ブラスやストリングスはありましたでしょうか?
まず、1982年の1枚目のアルバム『また明日』では次の1曲だけ(しかも、山下達郎ではなく井上鑑編曲)。
BE WITH YOU
作詞:安藤芳彦 作曲:村田和人 編曲:井上鑑
DS. 渡嘉敷祐一
B. 岡沢茂
KEY. 井上鑑
EG. 土方隆行・今剛
AG. 笛吹利明
PERC. 浜口茂外也
CHO. 山下達郎・難波弘之・椎名和夫・浜田金吾・松下誠・村田和人
HORN. JAKE. H. CONCEPTION・新井英治・数原晋
次に1983年雄2枚目のアルバム『ひとかけらの夏』の中では次の1曲だけ(しかも山下達郎ではなく、椎名和夫編曲)。
Catching The Sun
作詞・作曲・コーラス編曲/村田和人 編曲/椎名和夫
阿部 薫 – Drums
伊藤広規 – Bass
新川 博 – E.Piano, A.Piano, Synth
椎名和夫 – E.Guitar, A.Guitar, Percussion
岸 義和 – Trumpet
吉田憲司 – Trumpet
中沢忠孝 – Trombone
杉本勝行 – Trombone
村岡 健 – Clarinet
清水万紀夫 – A.Sax
鈴木重男 – A.Sax
三森一郎 – T.Sax
佐野博美 – T.Sax
砂原俊三 – B.Sax
国分友理恵 – Background Vocals
村田和人 – Background Vocals
非常に限定的であることがわかります。しかも、ストリングスはこの2曲ともにありません。
ちなみに、山下達郎プロデュースを離れた、3枚目、4枚目、5枚目では、サックスを除いて、全くブラスもストリングスも入っていません。
これは何を意味するのでしょうか?(つづく)