「ひとかけらの夏」2006年盤の「セルフライナー」より、当時から当方が大好きな2曲について。
4. So long, Mrs.
82年に"LADYOH(レイディー・オー)"という
アイドルの3人組に提供した作品。メロディ、アレ
ンジ、詞、どれをとっても出色の出来映えだと思う。
大滝詠ーさんがとても気に入ってくれて、カセット
の片面全部この曲で埋めて車の中で聴きまくってく
れたそうな。安藤芳彦君の詞も最高傑作の部類に
入るだろう。人によってはこの歌が女々しく聞こえ
るらしいが、とんでもない。昔の恋人が今は違う人
と幸せになっているのを、嬉しく、また甘酸っぱく、
そして自分が幸せにしてあげられなかった口惜しさ
を、上手く歌っているのだ。男なら、きっとこれと同
じ経験をした人がいるに違いない。口には出せな
いが、女性のみなさん、これが正直な男の気持ちな
のですよ。コーラスにはまりやさんも参加。
7. やさしさにGood-bye
達郎さんがアルパム中一番好きだと言っていた
曲。この曲でもそうだが、アルバムのギターとパー
カッションなどの小物類は、ほとんど逹郎さん自身
でプレイしている。元ドラマーの逹郎さんは、コチ
ョコチョと色んなパーカッションを持ち出しては、シ
コシコ録音していた。この曲では、珍しいオートハ
ープという楽器も演奏している。ギター・ソロも達
郎さん。速く弾くといったテクニックより歌心を大事
にする姿勢は、今も新鮮な理由かもしれない。
「So long, Mrs.」については、自信のほどをうかがわせるコメントですが、それだけの作品だと思います。初めて知った大瀧詠一さんのエピソードも面白いですが、村田さんが必死に言い訳めいたコメントを書いているのは、当時、具体的に誰かに(女性に?)実際「女々しい」といわれた経験があったからでしょうか? でも、以前にも書きましたが、個人的にも、この安藤さんの詞は、とてもうるわしくて好きです。
他方「やさしさにGood-bye」のほうは、かわいらしいタイトルですが、今度は山下さんのエピソードより村田さんの自信をうかがわせる内容で、確かにいい作品です。パーカッションについての記述は、大瀧さんもそうだと思うのですが、山下さんの好奇心(実験精神)というかパーカッション重視の姿勢を示すものですね。確かに、コーラスとともに、パーカッションは極めて重要で、その作品の「感じ」に決定的な影響を及ぼすこともあります。パーカッションではありませんが、(エレクトリック)シタールも山下さんの印象が強くて、いや、いろいろな楽器に「手を出して」いますね。
なお、村松邦男さんの「Hasta El Verano」(ミニアルバム『ツーリスト』収録)という作品(のギター)に、この曲に近いものを感じます。山下と村松、思った以上に近い部分があるのかもしれません。なお、村田さんと村松さんの接点って、なかったのだろうか?
それでは、来年もよろしくお願いします。
よいお年をお迎えください。